症例 8

症例:75歳 男 @集検時標本(フレムメルト法蓄痰) A精検時標本(直接塗抹法)

経緯:集検要精検者


提供施設スライド


@集検時標本

0001 0002 0003 0004 0005
0007 0008 0009 0010 0011
0012 0013 0014 0015  
A精検時標本
001 002 003 004
005 006 007 008

判定: D  高度異型扁平上皮細胞(上皮内癌、微小浸潤癌があるかもしれない)

@肺内成分が多く採取されている検体で、背景には壊死は見られませんでした。そして、オレンジGと少数ですがライトグリーンに好染し胞体の重厚感が増した多辺形から類円形の異型扁平上皮細胞が散見されます。異型扁平上皮細胞は2核〜多核になり、中等度のクロマチン増量が見られました。
A肺内成分が見られる検体で、背景には炎症性変化はありましたが明らかな壊死は認めませんでした。そして、オレンジGに好染して胞体の重厚感が増し、対細胞や細長い細胞型態を示す異型扁平上皮細胞が散在性に出現しています。これらの異型扁平上皮細胞はN/C比の上昇とクロマチン増量が見られ、核型不整や小さな核小体が認められます。 @Aの細胞所見より、高度異型扁平上皮細胞が最も考えられますが、一部に多形性や対細胞が目立つので早期の扁平上皮癌(上皮内癌や微小浸潤癌)がある可能性も否定できません。


事前鏡検施設スライド

@集検時標本

101 102 103 104
A精検時標本
201 202 203 204

判定:D 高度〜中等度異形成

標本@:オレンジG好染のものは、N/C比大、核形不整、クロマチン粗大・不均等分布、核小体を認めます。ライトグリーン好染のものは、N/C比大、核形不整、クロマチンの不均等分布、核小体、細胞質に層状構造様及びペアcell様の所見を認めます。 以上の所見をまとめますと、オレンジG〜ライトグリーン好染、N/C比大、核形不整、核小体の存在、クロマチン増量・粗〜顆粒状で不均等分布しています。 以上より、早期癌を考えたいところですが、WHO分類に基づいて考えますと高度異型扁平上皮細胞を考えます。 標本A:核中心性でクロマチンは顆粒状、N/C比は中等度大、細胞質の重厚感はありますが、細胞質の輝度は@のものより落ちます。核形は不整というか、はっきりしません。クロマチンは細〜顆粒状で比較的均一に分布しています。 以上の所見をまとめますと、細胞の大小不同は中等度、N/C比中等度大、クロマチン細〜顆粒状・均一なものから不均等分布、核小体の存在は不明瞭。以上より、WHO分類に基づいて考えますと中等度異型扁平上皮細胞を考えます。 結果:以上よりWHO分類に準じて考えますとD判定、高度〜中等度異形成と思います。


組織診断: crcinoma in situ(well diferntiatid squamous cell carcinoma) p0.pm0.n(-).br(-).pa(-).pv(-)

01 02 03 04 05 06 07
08 09 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21

提供施設スライドに戻る 事前鏡検スライドに戻る

講師解説 

この症例では扁平上皮癌(上皮内癌)由来と考えられる細胞とともに扁平上皮化生由来と考えられる小型な細胞を認めました。扁平上皮化生由来と考えられる細胞塊を構成する細胞は小型ですが、大小不同(Aisocytosis)がない点で癌細胞とは判断できないと考えました。

 (画像は拡大しません) 

異型性のある細胞が全層性に増殖しており、肺の上皮内癌の症例であった。

上皮内癌の部。表層細胞は小型である。

大小のある小型な癌細胞。

大小のある小型な癌細胞。

本例では癌病巣の中枢側に扁平上皮化生を認めた。一見全層置換性の病変で上皮内癌に見えるが、構成細胞に大小不同はほとんど無く、細胞の異型性もない。

細胞診標本中の扁平上皮化生由来と考えられる細胞。細胞は小さく、一見上皮内癌やSevere dysplasia由来の細胞にも見えるが細胞に大小不同(anisocytosis)が無い点で癌やSevere dysplasia由来とは判断できない。