1.細胞診の報告様式
 
1)判定区分
    
検体不適性 (inadequate)
検体適正 (adequate)
正常あるいは良性 (normal or benign)
鑑別困難 (indeterminate)
悪性の疑い (suspicious for malignancy)
悪性 (malignant)

2)所  見

   (1)判定した根拠を具体的に記載する。
   (2)乳癌取扱い規約組織分類に基づき可能な限り推定される組織型を記載する。


判定区分の診断基準

1)検体不適正(inadeqate)

標本作製不良(乾燥、固定不良、細胞挫滅・破壊、末血混入、厚い標本等)、または病変を推定するに足る細胞が採取されていないため、診断が著しく困難な標本を指す。不適正とした標本はその理由を明記する。

*付帯事項:本区分の占める割合は細胞診検体総数の10%以下が望ましい。

2)検体適正(adeqate)

正常あるいは良性(normal or benign)

正常乳管上皮および乳管内乳頭腫、乳腺症、葉状腫瘍(良性)、嚢胞、乳腺炎、脂肪壊死などが本区分に含まれる。

鑑別困難(indeterminate)

細胞学的に良・悪性の判定が困難な病変を指す。
乳頭状病変(乳管内乳頭腫、乳頭癌)、上皮増生病変(乳管過形成、ADH、低異型乳癌:篩状型)、上皮-結合織増生病変(葉状腫瘍:境界病変、一部の乳腺症型線維腺種)など良・悪性判定が困難な細胞群が本区分に含まれる。

*付帯事項:本区分の占める割合は検体適正症例の10%以下が望ましい。再検査あるいは針生検、または症例に応じて切開生検を勧めることを考慮する。

悪性の疑い(suspicious of malignancy)

悪性腫瘍の疑い。
主として異型の少ない非浸潤癌や小葉癌などが本区分に含まれる。

*付帯事項:その後の組織学的検索で悪性であった症例は「悪性の疑い」の総数(組織学的検索済症例)の90%以上が望ましい。

悪性(malignant)

悪性腫瘍。乳癌、非上皮性悪性腫瘍などが本区分に含まれる。

注)
(1)検体不適正が10%を超える場合は採取方法、標本作成方法についての検討が必要である。
(2)鑑別困難、悪性の疑いにおける10%、90%の判定基準値から明らかに逸脱するときは標本の精度管理が必要である。
(3)細胞診断にあたっては画像所見との整合性を考慮して診断することが望ましい。

(”乳腺における細胞診および針生検の報告様式ガイドライン 日本乳癌学会編”より抜粋)