症例 8

症例の経緯
75歳女性 2〜3日前より右乳頭から血性乳頭分泌物を認めその後右乳頭の腫脹、疼痛出現し当病院外科受診。右乳頭から膿性分泌物あり、直接塗抹による細胞診施行。同時に穿刺細胞診施行
消炎治療後(10日後)、再度乳腺穿刺細胞診施行。さらに消炎治療を続け1週間後乳頭分泌物細胞診と乳腺穿刺細胞診を施行した。

標本作製法 乳頭分泌物:直接塗抹 穿刺物:生食洗浄液オートスメア法


初回乳頭分泌物の細胞像
001 002
判定
提供施設:
好中球、組織球主体の高度な炎症所見、良性と判定。

事前鏡検施設:悪性所見は認められないと考えます。


初回穿刺細胞像
003 004 005 006
007 008 009 010
判定
提供施設:
炎症細胞と二相性の乳管上皮が見られる中に結合性が強い乳頭状病変を疑う細胞もみられたが、異型も弱く筋上皮様の濃縮核も見られ良性と判定。

事前鏡検施設:背景に明らかな双極裸核像は認められず、乳管上皮細胞の集塊が数か所認められます。緊満感のある均一な核から構成され、集塊中には腺腔構造が目立ち、一部に集塊からのほつれも認められますが、核異型は乏しく、一部に二相性様の像も認められます。しかし、変性した上皮細胞との鑑別が難しく、乳頭状増殖性病変の疑いを否定できない像と考えます。


2回目穿刺細胞像
011 012 013 014 015 016
判定
提供施設:
異型細胞が多数みられ、結合性低下、篩状配列様の所見が見られるが、一部に筋上皮様の所見および炎症が強いため悪性の疑いとし組織での確認を依頼した。

事前鏡検施設:腺腔を多数伴う重積性集塊が数か所認められます。腺腔の形状が不整形のものや、腺腔に大小不同がみられ、線維腺腫との鑑別を要しますが、背景の双極裸核像や集塊中の二相性はほとんど認められず、また類円形の均一な核から構成される大型集塊で、乳頭腺管癌を疑う像と考えます。


2回目乳頭分泌物細胞像
017 018 019 020
判定
提供施設:
細胞数個集まった異型細胞集塊を認める。細胞の大きさもやや大きいことから判定保留とした。

事前鏡検施設:記載なし


最終穿刺細胞像
021 022 023 024 025 026
判定
提供施設:
背景に二相性の乳管上皮と数個の異型細胞を認める。大きさも小型のため clear cutに判断しがたく判定保留とし組織での確認を希望。悪性と良性両方の病変の混在疑われる。

事前鏡検施設:背景に明らかな双極裸核像は認められず、乳管上皮細胞の集塊が数か所認められます。集塊中には乳頭状の突出や腺腔構造がみられ、明瞭な二相性はほとんど認められず、乳頭状増殖性病変の疑いを否定できない像と考えます。


Excisional biopsyの組織像
01 02 03 04
05 06 07 08

Simple mastectomyの組織診断:Non-invasive ductal carcinoma (背景にIntraductal papilloma (intracystic) を認める)


組織像
09 10 15 11
12 13 14

最終組織診断:Non-invasive carcinoma & Invasive ductal carcinoma

備考:今回の症例は、Excisional biopsyではIntraductal papilloma (intracystic) を背景にNon-invasive ductal carcinoma を認める組織像。 Simple mastectomyではNon-invasive carcinoma &Invasive ductal carcinomを認める組織で、Intraductal papilloma の所見Non-invasive ductal carcinoma の所見が隣接した場所にみられた。 また、そのまわりに好中球、組織球を主とする炎症像もみられ、細胞診の所見と一致した。 臨床的には消炎治療と平行しecho上に認めるlow eho 病変からの細胞診を行うことでガン治療に結びつけられたケースだった。 良性と判定した初回穿刺標本に出現した小型乳頭状集塊を他施設ではどう判定されるか、また、最終穿刺標本でみられた異型のある小型乳頭状集塊についての意見も聞きたい。 狭い病巣範囲の中で炎症・良性病変・悪性病変がみられることから、良性・悪性両病変の混在を疑いながらも判定に苦慮した症例として研修会に提供した。